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「不可能」から生まれた橋——ゴールデンゲートブリッジ、設計の裏側と偶然のオレンジ

Visiting the Golden Gate Bridge

建設年:1933年(着工)/1937年(完成) 設計者:ジョゼフ・シュトラウス(チーフエンジニア)、アーヴィング・モロー(建築デザイン)、レオン・モイセイフ(構造設計)

 

こんにちは! 今回は、おそらく一度は写真で見たことがあるはずの、あの橋についてのお話です。

霧の中からオレンジ色の巨大な塔が顔を出す、あのシルエット。

サンフランシスコといえば、真っ先にこの橋が浮かぶという方も多いんじゃないでしょうか。

そう、ゴールデンゲートブリッジです。

 

この橋、見た目の美しさだけじゃなくて、その裏側にある話がとにかくドラマチックなんです。

今日はそのあたりを、建築・構造の観点も交えながらじっくりご紹介したいと思います。

Golden Gate Bridge View: Stunning Vistas You Need to See

不可能と言われた橋が、なぜ実現したのか

ゴールデンゲートブリッジが架かるゴールデンゲート海峡は、サンフランシスコ湾と太平洋をつなぐ幅約1.6kmの海峡です。

今でこそ「橋があって当たり前」の場所ですが、建設が始まった1933年当時、この海峡に橋を架けるのは「不可能」と言われていました。

理由は明快で、条件がとにかく悪すぎたのです。

強風と霧が絶えず、海流は非常に速く、水深は約100メートルにも達します。

さらにサンフランシスコのあるカリフォルニア州は地震の多発地帯です。

まさに橋を架けるための条件が、ほぼ全部そろっている悪環境でした。

 

そんな場所に橋を架けようと名乗りを上げたのが、チーフエンジニアのジョゼフ・シュトラウス。

彼はそれまでに400本以上の可動橋を手がけてきた人物で、この巨大プロジェクトを推進しました。

とはいえ、彼一人の力ではありませんでした。

構造解析の専門家レオン・モイセイフが吊り橋としての設計に大きく貢献し、デザインを担当した建築家アーヴィング・モローがアールデコのスタイルと、あのオレンジ色の配色を決定しました。

 

さらに建設には、大恐慌という時代背景も絡んでいます。

1933年、ようやく大恐慌が一段落つき、復興へ向かおうとしている中、

国や州が援助する余裕はなく、地元住民が財産を担保に公債を発行しました。

バンク・オブ・アメリカがその公債を引き受けることで、ようやく着工にこぎつけたのです。

つまりこの橋は、市民の意地と民間の資金力だけで建てられた橋なんです。

開通から34年後の1971年、通行料だけで建設費を完済したというのもなかなかすごい話です。

数字で見ると、その規模感がわかる

ゴールデンゲートブリッジは全長2,737メートル、主塔の高さは水面から227メートルです。

主塔間の距離(中央径間と呼びます)は1,280メートルで、1964年にニューヨークのヴェラザノ・ナローズ橋が完成するまでの27年間、世界最長の吊り橋として君臨し続けました。

 

中央径間というのは、ごく簡単に言うと「橋を支える柱と柱の間の距離」のことです。

この数字が大きければ大きいほど、橋の設計は難しくなります。

橋を支えるケーブルの話も圧倒的です。

2本ある主ケーブルの直径はそれぞれ約92センチ、1本のケーブルの中にはなんと27,572本もの細いワイヤーが束ねられています。

そのワイヤーを全部つなげると、総延長は約12万9,000キロメートル。

この長さは地球をおよそ3周以上する長さです。

数字だけ聞くと、少し頭がくらくらしますね。

ゴールデン ゲート ブリッジ (サンフランシスコ) - ツアーとアクティビティ | エクスペディア

 

アールデコの美しさは、偶然の産物だった

建物の話をするときに外せないのが、あのオレンジ色です。

正式には「インターナショナルオレンジ」と呼ばれるこの色、実は最初から選ばれた色ではありませんでした。

鋼材に塗られていた防錆プライマーの色が、たまたまオレンジがかった赤だったのです。

建築家のアーヴィング・モローがこの色を気に入り、霧の中での視認性と自然との調和という理由も加わって、最終的にこの色が採用されることになりました。

 

一方、アメリカ海軍は視認性の観点から「黒と黄色の縞模様にすべきだ」と主張していたといいます。

もしその案が通っていたら…今と全然違った姿になってたでしょうね。

現在の姿が「偶然の産物」だったというのが、なんとも面白いところです。

 

主塔のデザインはアールデコ様式で統一されています。

アールデコというのは、1920年代から30年代にかけて流行したデザインのスタイルで、幾何学的なラインと装飾的な美しさが特徴です。

ニューヨークのクライスラービルをイメージしていただくと、雰囲気が伝わるかと思います。

主塔の縦方向の線を強調したフォルムや、街灯や欄干の細部にいたるまで、このアールデコのスタイルが貫かれているのがゴールデンゲートブリッジのデザイン的な骨格です。

 

橋が持つ「しなやかさ」という安全設計

吊り橋の面白いところは、構造的に「動くことを前提」としている点です。

ゴールデンゲートブリッジは強風時、橋の中央部が横に約8メートルほどたわむように設計されています。

「たわんで大丈夫なの?」と思う方も多いでしょうが、むしろこれは正しい設計です。

剛体として作ると、風や地震のエネルギーが逃げ場を失い、一気に破壊に向かいます。

適度にしなることで、力を分散させて受け流す。

この考え方は、ちょうど竹が台風でも折れにくいのと同じ原理です。

<画像を挿入:歩道から見た橋の全景または霧に包まれたゴールデンゲートブリッジ>

後年には日本の大林組も参加して耐震補強工事が実施されました。

これはサンフランシスコが地震の多発地帯であることを考えると、当然の判断です。

工事は年間4,000万台以上の車が通行する橋を止めることなく行われたといいます。

橋を止めないまま補強工事をするというのは、想像するだけで相当な技術的挑戦です。

 

「不可能な橋」が問いかけるもの

個人的に、ゴールデンゲートブリッジを語るとき、まず「不可能」と言われ続けた経緯がいつも気になります。

あの環境に橋を架けることが「不可能」とされた最大の理由は、技術的な問題だけではなかったはず。

資金の問題、政治的な反対、そして「そんなもの必要ない」という慣性の力。

そういった様々な障壁が、「不可能」という言葉に凝縮されていたのだと思います。

 

面白いのは、シュトラウス自身が最初に提案した設計が、見た目の問題で却下されていたという点です。

つまり、最終的なあの美しい橋の形は、最初の提案とはまったく別物でした。

専門家たちが何度も意見をぶつけ合い、設計を作り直し、資金を工面し、工事を乗り越えて、あのシルエットが生まれました。

一人の天才が描いた図面から生まれた橋ではなく、いわば「集合知」の産物です。

 

建物や構造物を見るとき、完成した姿だけを評価しがちです。

でも実際には、その裏に幾重もの妥協と衝突と再設計があります。

ゴールデンゲートブリッジは、そのことを非常に雄弁に語ってくれる構造物だと感じています。

絶景ゴールデン・ゲート・ブリッジの写真撮影スポット4つ | SF CLIP

 

橋のオレンジ色が、今も問いかけること

建築やデザインの世界でよく言われることがあります。

「最良のデザインは、必然から生まれる」という考え方です。

 

ゴールデンゲートブリッジのオレンジ色は、先ほどお話したように偶然の産物でした。

でも、見た目だけでなく、霧の中での視認性という機能面でも理にかなっていた。

つまり、偶然が必然に変わった瞬間があの色の採用だったわけです。

 

かつて海軍が望んだ黒と黄の縞模様でも、機能面では問題なかったかもしれません。

でも、あの橋があのオレンジ色でなければ、霧の中から現れるあの神秘的な光景はおそらくなかったでしょう。

サンフランシスコのシンボルとして、世界中の人々の記憶に刻み込まれることもなかったかもしれない。

 

デザインの決定というのは、いつも正解があるわけではありません。

でも、文脈とタイミングと、そして多少の偶然が重なったとき、最良のものが生まれることがあります。

ゴールデンゲートブリッジは、そういう意味でも、稀有な構造物だと個人的には思っています。

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