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大阪湾岸の超高層ビル「さきしまコスモタワー」が語るバブルの夢と建築のリアル

さきしまコスモタワー(大阪府咲洲庁舎) | ニッポン旅マガジン建設年:1995年(竣工)/1991年(着工) 設計者:日建設計・Mancini Duffy Associates(マンシーニ・ダフィー・アソシエーツ)

 

大阪湾岸のランドマーク、さきしまコスモタワーが面白すぎる理由

こんにちは! 今日は、大阪に住んでいる方なら一度は遠くからその姿を目にしたことがあるんじゃないかと思う、あの細長くてスラッとしたタワーについて書きたいと思います。

そう、大阪市住之江区南港にそびえる「さきしまコスモタワー」、正式名称は「大阪府咲洲庁舎」です。

 

夢洲や南港あたりを走る車の窓からも見えますし、関西国際空港に向かう途中にふと視界に入ってきたりもします。 「あのタワー、なんか細長いな」と感じた方、実はその感覚、かなり正しくて、建築的にも非常に興味深いポイントなんです。

今回はこのビルを、ただの観光スポットとしてではなく、建築という視点から少し深堀りしてみたいと思います。

 

埋め立て地に生まれた、バブルの申し子

このタワーが建てられたのは、大阪市港湾局が1988年に策定した「テクノポート大阪」計画がきっかけです。

大阪湾岸の埋め立て地、約775ヘクタールという広大なエリアを、国際的なビジネスの拠点として開発しようという壮大な構想でした。

 

当時はバブル経済の真っ只中で、「大阪をアジアのビジネスハブに」という夢が語られていた時代です。

その象徴として、世界各地にあるワールドトレードセンター(WTC)のひとつとして建設されたのが、このビルの原点です。

1991年に着工し、1995年に竣工。総事業費は実に1,193億円にのぼります。

 

バブルが弾けた後の竣工だったこともあり、オフィスの入居が計画通りには進まず、長らく空きフロアを抱える時代もありました。

その後、2010年に大阪府に譲渡され、現在の「大阪府咲洲庁舎」という名称になっています。 なんとも数奇な運命をたどってきた建物です。

 

さきしまコスモタワー展望台 | 観光スポット・体験 | OSAKA-INFO

この細さは「設計の意図」だった

さきしまコスモタワーを遠くから眺めると、とにかく細長い印象を受けます。

実はこれ、感覚的なものではなく、数字できっちり確認できます。

 

建物の縦横比は、横:縦が1対3.31です。

ざっくりいうと、横幅に対して高さが3倍以上あるということです。

背丈170センチの人が、横幅50センチちょっとしかないイメージ、と言えば伝わるでしょうか。 相当スリムですよね。

 

地上55階、地下3階建てで、高さは256メートルです。

1995年の竣工当時は、横浜ランドマークタワーに次いで日本で2番目の高さを誇り、西日本では最も高いビルでした。

現在は日本で6番目の高さになっていますが、それでも256メートルというのは、依然として圧倒的な存在感です。

 

面白いのは、もともとの計画では高さ252メートルで設計されていたという点です。

ところが同時期に大阪府が別の場所で建設していた「りんくうゲートタワービル」が256メートルになるとわかり、「じゃあこちらも」と4メートルかさ上げして256メートルに変更したという経緯があります。

当時、大阪府と大阪市が対立しながらそれぞれ競いあって建物を建てていました。

それもあって、大阪府と大阪市の垣根を無くし協力してビルを建てられるよう、大阪都構想を日本維新の会が行おうとしたのです。

高さをめぐる、なんとも人間的なエピソードですよね。

 

ダンパーという「縁の下の力持ち」

超高層ビルに欠かせないのが、風や地震に対する備えです。 このタワーには、竣工後に大がかりな耐震改修工事が行われています。

 

2012年から2013年にかけて、長周期地震動への対策として、鋼製ダンパー152基とオイルダンパー140基、合わせて292基ものダンパーが設置されました。

ダンパーとは、建物が揺れたときにそのエネルギーを熱などに変換して吸収する装置のことです。

車のサスペンションのような役割を建物全体に持たせるイメージです。

 

このビルが建つ場所は埋め立て地です。

そのため、地盤が柔らかいので地震の際に地面が長くゆっくり揺れる「長周期地震動」の影響を特に受けやすい立地になっています。

 

そういった環境だからこそ、後付けであれだけ大規模なダンパー工事が必要になったともいえます。

竣工後に技術が進歩し、それをきちんと建物に組み込んでいく姿勢は、建物の長寿命化という観点からも非常に重要な取り組みだと思います。

 

「コスモタワーが面白い」と思う本当の理由

個人的に、このビルを見るたびに感じることがあります。

それは、「このタワーは、大阪の都市計画のある意味で正直な証人だ」ということです。

 

バブル期の夢を全力で形にしたビルが、バブル崩壊後に苦しみ、やがて行政の庁舎として再生していく。

この経緯が、建物の存在そのものに刻まれているように感じます。

建物は建てられた時代の空気を吸って育ちますが、その後の時代にどう適応していくかもまた、建物の物語の一部だと思うのです。

 

建築の世界では「コンバージョン」という言葉があります。

これは、もともと別の用途で設計された建物を、改修して新しい用途に転用することを指します。

ざっくりいうと、「元々オフィスビルだったものを、住宅や庁舎として使えるように作り直す」ということです。

このタワーの場合、完全な用途変更というわけではないですが、民間のビジネス拠点から行政の庁舎・複合施設へと転換した過程は、それに近い柔軟な適応の例といえるかもしれません。

 

大阪の2020年最旬スポット!『さきしまコスモタワー』【穴場絶景】|グルメ保険

「見に行くだけ」ではもったいない理由

このタワーには55階に展望台があり、地上252メートルから大阪湾岸、淡路島、明石海峡大橋、さらに関西国際空港まで360度の眺望を楽しめます。

1階から52階まではシースルーエレベーターで一気に上がり、53階から55階は全長42メートルという迫力のロングエスカレーターで到達するという体験の演出も面白いです。

 

展望台の窓ガラスが斜めに設置されているのも、夜景を見る際に照明がガラスに反射しないようにするための工夫です。

こういった細かい設計上の配慮が、実際の体験をしっかり支えているんです。

「なんか見やすいな」の裏側には、必ず設計の意図があります。

 

それから、あまり語られないと思うのですが、このビルが建つ場所からは大阪の都市の「広がり」が非常によく感じられます。

梅田・中之島の超高層ビル群が北に見え、南に目を向ければ関西国際空港が霞む。

湾岸の埋め立て地に立つことで、大阪という都市が海側にどれだけ拡張してきたかが、視覚的にひとめでわかるのです。

これは中心部の高層ビルからは絶対に得られない、このタワーならではの眺めだと思っています。

 

「さきしまコスモタワーを見た」ではなく、「さきしまコスモタワーから大阪を見た」という体験が、このビルの本当の楽しみ方かもしれない。 そんなふうに感じています。

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